私の履歴書

という名物コラム?が日経新聞にある。各界の著名人が月替わりで担当、自分のこれまでを語るというやつ。人によっては数か月経つと「○○が語る半生!」みたいなキャッチで本になって出てきたりもします。これがなかなか面白い&読みやすい位置を占めているためにけっこう読んでいます。
日経を購読するようになって4年3カ月ほど、ということはすでに約50人分の「偉人伝」を読んでいる計算ということで、これは継続の力、月極め購読の新聞の力恐るべし。(ただし、何がどうしてとも言い難いが妙に興味がわかない、読む気のしない人がいて、少なくみても5、6人はまともに目を通していない。)

さて何が面白いのかというと…

  • 普通に

ふむふむこの人こういう人だったんだ〜とか、こんな人生があるのか、とか。素直に読める。仕掛けてくる人?だと、その日の最後の一文に「しかし、事態は急転する」とか書いて、ベタな手だと思いつつも気になるので、翌日いの一番に読んでしまったりする。

  • 総体として表れる「人生すごろく」っぷり

編集・校正の手によるものか、「みんなそうだから」と書き手が自主的にそう書いてしまうのか、はたまた本当に人生をそう認識しているのかよく分からないが、これがまた見事に「型」ができているのだ。統計はとってないので(誰かとってないのかな)、あくまでも私の印象ながら。
初回はあいさつ・総論、2〜7日目くらいが「そもそも我が家は〜」と出自説明と幼少期や小中高あたり、10日前後で大学入学と就職を終えて社会人スタート、中旬までには恋愛・結婚・子どもネタを0.5〜1回差し込み、逆境やらピンチやらにもまれつつも乗り越えて、29日あたりに現在に追いつき、育った子どもの自慢(今は○○で活躍中)をさらっとはさんで、最終日には「いやあこれからも頑張ります」、と締めくくる。黄金パターン。
サラリーマン系の人は、その時は面白いかなーと思っていても、パターンへのハマり度高いせいか、はっきり言って記憶に残っていない。一方、ぶっちぎった人として記憶にあるのは(名前は忘れたけど…)、戦中世代の人で、戦時の南方での物品調達の話等が長く、20日過ぎても30代くらいだったか?果たしてこの人は月内にしめくくれるのかと勝手に心配になった。この世代の人にとってはこれこそが若い時の、かつ強烈な記憶なのだとも思った。

  • その他(ネタ、エピソード)

天然なのか、なにか恐れているのか毒にも薬にもならないことばかりを書いてた女優さん(名前忘れた。扇千景ではない)もいる一方で、不倫ネタ大暴露した有馬稲子など。あれって私が知らないだけで有名な話だったのかと思っていたけど、このとき初めての大暴露だったんですね。安藤忠雄は「阪神大震災のときには略奪は一切起こらなかった」みたいなことを書いていて、個人的にひいた(何を根拠に…あなたは神ですか?)。
で、ここへきてやっと、今回書きたかったことにたどりつく。今月の小田島雄志(東大名誉教授)、15日付「路傍の花一輪摘み即答」そう、恋愛結婚ネタの回。今まで「(名字)さん」と書いてあったのが、プロポーズ受諾の次の文章から「(名前)」に変わるのである。しかも律儀にも「(名前)(とここから急に日記の中の呼び名が(名字)さんから変わった)」と書いてあるのだ。すごい!!プロポーズ受諾されたらすぐさま呼び捨てにできちゃう、この安直な、「おれのもの」的な感じがたまりません。
その前の週あたりに読んでいた、春日キスヨ『家族の条件』(岩波現代文庫)の中で、「男は女房と自分は一心同体だと思いたい」「心配りしなければならないなんて思いつかないくらい、自分と同じだと思ってる」というのを読んで、マジ勘弁だわ…とげんなりしていたところだったので、ああ、これがとりあえずはソフトにこういう風(そっこー呼び捨てw)に現れるのか!と思った次第であります。
まあ「ネタ」とか書いちゃいましたが、家族・配偶者の扱いが適当な感じが透けて見える人って、私はそれだけで「所詮はオヤジか」って見てしまうけどね。