読書メモ

経済学を学ぶ人、社会人にうってつけの基本書、入門書とのことだったので、しばらく前に買っていた。ほぼ毎年ペースで更新して版を重ねている定番書のようで、この版は2012年4月が第一刷。こういう機会でなければ通読しないだろうし、せっかく先日『考える技術・書く技術』を読んだので、じっくり、特にパラグラフを意識しながら、メモまで取りながら読んでみた。

その結果の感想。
1 良くも悪くも新聞の延長にある本(著者は3名とも日経の記者)
良いところは、「知っておいた方がいい」話題が一通り押さえてあり、かつ適度な量にまとまっているところ。悪いところは、あくまでも「紹介」にとどまっていて上から目線の傍観者なところ(例えば、「経営者はより一層の努力が必要であろう」みたいな文章の締め方)や、時々何かを声高に主張するのだが、明確な根拠を示したうえでの結論ではなく、「善」ありきでやたらと扇動的になるところ。例えば、グリーン社会、低炭素型社会などを推してくるのだが、私も個人的に好ましいと思っているのだが、根拠を述べずに「これからは低炭素型社会を目指すべきだ」と来るので、どうにもうさんくささだけが残る。また、淡々と教科書的に語るのではなく、主観的・感情的な文章も多くて驚いた(特に、日本の経済的凋落は情けない、など「日本」「日本人」という言葉を使うときに多い)。
2 パラグラフライティング上は悪文
パラグラフ間のつながりを意識して読んでみたら、序章からしてつまづいた。そして、これが「典型的な日本語的作文」のように思われて驚いた。つまり、あるテーマについてのトピックスをあれこれ書く、段落は適当な量に到達したら区切る、という書き方。しかもトピックスの選び方が「結論につながるため」ではなく、「これは有名だから、知っておいた方がいいことだから」という基準でしかない。段落タイトルはたしかにその段落の中身を概ね表しているものの、それらの間に必然性や関係がないので、タイトルをつなげて章全体の話を要約することができない。結局、羅列された話題を覚えられるかどうかがこの本を理解できたかどうかになってしまう。
もっとも、この本は論文ではなく、「一通りの話題を押さえること」を目指していると言われればそれまでの話でもある。また、改版の多い本なので、章のはじめに最新トピック、次の章にそのもう少し前のトピック…と順送りになってしまうのも致し方ないのだろうとは思える。

というわけで、新聞と同じで、あくまで話題を理解するということでは、「日経新聞は読めよ」と言われる立場にある人は読んでおいたほうがよい本だが、本として優れているかと言うとそうは言えない、と感じた。
個人的に、経済学理論で数式やグラフが登場すると途端に目が逃げて行く…ということも再確認。。