多少知的な雰囲気を醸し出さんと書いた一節

先日、新聞の土曜版のコラムに「変わる甲子園勢力図」という記事が載っていた。私は甲子園好きなのでまず目を引いたが、内容的にも面白かった。スポーツ欄の記事の、例えば今年ホームランが多かったのはなぜか(筋トレや現在のバットの規格に順応した結果とか)、というような記事にはない面白さがあるのは、甲子園というスポーツ界だけを見ていては見えてこない分析があったからだ。
主な主張としては、ここ数年勢力をを伸ばしているのは①有名大学付属校と②公立校である。前者はスポーツ入試枠を設けて優秀な選手の獲得に励みだしたため。後者は従来ならば私立校で甲子園を目指したであろう選手もおそらく経済的な理由により公立校に進学しているため、地方大会では私立と公立のレベルが近づいており、公立校の甲子園出場にもつながっているというわけだ。しかし、あまりはっきりと書いてはいないが、「今年の甲子園で大差の試合が目立ったのは偶然ではない。優勝候補といわれる上位校と他校の間には大きな力の差があった」と書いていることからすると、公立校にも出場のチャンスは広がっているけれども、出場校内の差は歴然である(大学付属校の優位)という甲子園で広がる格差を示唆しているようにも見受けられる*1
さらに最後に今の世代はサッカー世代でもあるので、運動能力の高い生徒がサッカーに流れている可能性も見なければならないと書いている。
この分析そのものも私には面白かったのだが(今後こういう視点を持って甲子園を見ることにしよう)、ここで思い出したのは、ある企業の人事の人が言っていたことだ。曰く「優秀な人材とは情報と情報をつなげる能力が高い。そういう人は伸びる」。当たり前のことかもしれないが、私はそのとき強くなるほどと思ったのである。
この例で言えば、いくら甲子園が好きで野球が好きでも、スポーツとしての甲子園しか見ない人にはこの分析ができない。甲子園は高校野球なのだから、当然教育界の動向に左右される。教育は景気や経済動向と深くリンクしている。それをつなげられるか。甲子園の、野球の影に隠れているもの・・・・少子化によって生き残りのために、有名校であってもスポーツ強化による知名度・イメージアップを図る戦略を採り始めたこと、一方景気が悪く私立進学(野球留学)ではなく自宅通学の公立の傾向が高まったこと、サッカー人気・・・・が見えるか。見えないもの、影の要因が見えるか、一つの情報を得たときに他の情報とつなげられるか、風が吹いた時に桶屋のことを想像できるか*2。できるようになりたくば、少なくともぼけーーーーーーーーーーーーっと生きるのをやめよう。アンテナをはりめぐらせ、情報を集めろ。
もう一点。同じ日の記事に、専業主婦→「娘の教育費でも稼ぐか*3」というパート→正社員→社長になった人の話がついている。この人が「主婦の経験が生きたという実感はあるか?」という質問に対して「正直、ないですね」と答えてるのが、目新しく感じられた。というのも、こういう経歴の人は働きたいと思っている主婦の「希望の星」であり、であるがゆえに「主婦業がいかに役に立つか」を言いがちだからだろう。少なくとも、そう言うであろうと読者側が期待するのだろう。そういう言説に私は飽きるほど触れてきた。だからだろうか。
でも考えてみれば、主婦の経験であろうが子育てであろうが何の経験であっても、役に立つかもしれないし役に立たないかもしれない。それは当たり前のことだ。そもそも同じ経験からでも何かを学ぶ人と学ばない人がいるし、学んだにせよそれが次なるフィールドで役に立つとは限らない。邪魔になるかもしれない。また、役に立っていることに自覚的である人と無意識である人もあろう。
だから家事業や育児業が特別視されることがなくなるといいのではないか。

*1:と思って今大会の試合結果を調べてみた。私立有名校系VS地方公立校で前者が大差で勝っていれば私の読みも間違いではないのだろうが、必ずしもそういう結果ではなかった。

*2:ところで私はどうして風が吹くと桶屋が儲かるか分からないのですが、だれか因果関係を教えてください〜

*3:専業主婦がパートを始める時、みな口をそろえて「教育費の足しに」というのは興味深いことだと小倉千加子が言っていた。生活費ではなく教育費。