今年の映画

今年はできるだけ月に1回程度は映画を見ることにしよう、と年初に決めて、以下の映画を見てきた。結局、月1本には至らなかったが、こんなに映画館で映画を観たのは初めてだ。
月に1本くらい観たいものがあるだろうと思いきや、意外とない。4,5月は別件あって控えたこともあるが、8,9月は観たいと思うものがなかったのが主因。ドーン!バーン!のハリウッドアクション、若者向けのだるそうな恋愛映画など、試写会などで「感動しました」「涙が止まらなかった」と観客が言っていそうな「大ヒット上映中」のものはたいてい行く気を失くすので除外していくとこうなった。といっても、それなりに話題作を追いかけていますが…

一番良かったのはやっぱりこれか。ずっとミュージカル(舞台)として気になってはいた作品だったが観たことがなかった。この映画はいい!という口コミもあって、新年早々から観に行く。3時間という長さを感じさせない、全編ミュージカルはまるで舞台を見ているようで、途中で拍手しそうになった。音楽の良さ、歌のうまさ、作品の完成度の高さ。特に歌、普通に有名な俳優陣がこんなに上手いとは…(日本のミュージカル界のイメージでは「普通に有名な俳優」はたいてい「ミュージカル初挑戦」で、主演であろうと歌の技術には目をつぶって観るものだと思っていたので)。今年は映画に始まって、この映画のCDとDVDを買い、東宝の舞台を観に行き、原作を読んだので、個人的に「レ・ミゼラブルイヤー」になった。

主演のヒュー・ジャックマンの上手さとかっこよさにほれて、他の作品でもぜひ見てみたいと思っていたら、その後やっていたのが私がきらいな「ドーン!バーン!のハリウッドアクション」で非常に残念無念だった。あんなに歌えるならもっとその才能を生かしてミュージカルやってくれ!とミュージカル好きとしては思う。

  • 2月「テッド」

下ネタ始めきわどいネタだらけの監督と知ってて観に行ったので、そういう意味で面白かった。観終わった後はFour Letter Wordsが頭の中にこだまする。なので、テレビなどで「くまさんかわいい〜」などともてはやされているのを見て(そういうCMの打ち方をしているのを見て)、そういうノリで観に行った人は困るのではないかと要らぬ心配をした。

フランス映画。たけしが「今の日本のテレビや映画は語りすぎ、説明しすぎ。視聴者を馬鹿にしすぎ」という趣旨のことを言っていたのを新聞で読んだが、その意味が分かった気がした。というのも、これはあまり語らない、愛想がない、率直に言えば「ちょっと今のシーンの意味はよく分からなかった…」という場面がいくつかある。そうか語りまくらないってこういうことか。逆に、大衆向けに作るというのは、そこそこ適当に見てても意味がわかる、落とし所が分かるということか。よく分からないと思ったり、地味な作りだったりしたので、途中でもしかしたら外れだったかもと思ったが、最後にはふいに胸がふさがれる思いがしていた。心に残る作品。
本筋とは関係ないが、老夫婦の話で、食事シーンが何度か出てくるが、ステーキみたいな肉をよく食べていて、やはり食文化が違うのだなあと思った。

ギャツビーがどんな話か分かってよかったが、やはり私の趣味ではないことを確認する形になった。なぜこれを3Dで作った?(3Dでは観ていないが)。そういうビジュアルなハデさ(衣装やパーティーシーン)で盛っているあたり、さらに内容面で訴えてこないように感じる。

久しぶりのジブリ。最近、よく分からなさそうなの(ぽにょとか)が多かったので、話の筋が分かるジブリになったと思った。だが、ここで終わりなんだ…?というのと、ヒロイン像が好きになれないのとで、「まあ観といてよかったけど」という程度にとどまった。昔の金持ちって本当にお金持ちなんだなあ(軽井沢の別荘や使用人がいるのや)とか、“大人”なシーンが多いとか、喫煙シーンが多いとか、クレソンってあんなに山盛りにして食べるのかとか、本筋と関係ない部分が頭に残ってしまった。

エンターテイメントとして、あっはっはと面白かった。

愛、アムール」と似て、分かりにくい(説明が少ない)作品と思った。ちょっと待って、このおっさんとアーレントの関係は…?など。アーレントの人生の中でもアイヒマン・レポートの部分にほとんど特化していて、より分かりにくい。そして、なぜ今これを作ったのかと思う。
1回目に行ったときはチケット完売で2回目のチャレンジで観る。上映館の岩波ホールの観客層がそうなのか、特に並んでいる最中は中高年が観客の中心で、この人たちはもともとアーレントに興味があって来ているのか(上映後耳に入ったおしゃべりでは全然そうでもなさそうな人もいて、なぜに観に来たのか率直に疑問に思ったり)、東京の社会科学やってる学生・やってた若者はいないのかという2点が気になる。

  • 12月「清州会議」

つまらなくはないけれど、思ったほど面白くない。CMや番宣でいいところが出尽くしてしまっている。やはり基本のストーリーとキャラクターが縛られているのは苦しいんだろうなと思った。というのも、三谷作品のコメディの面白さは「笑える状況を作り出す」ところにあると思っていたから。「有頂天ホテル」など絡みに絡んだ人間関係がこっけいな場面を作り出す、という巧みさがすごいと思った。